文化財の複製・修復|製作者プロフィール
第2回 保存

仕事内容

遺物にとって負担が小さく、かつ効果の高い処置で
見過ごされた価値の発見と維持に努めたい。
平成5年京都教育大学を卒業し、同年京都科学入社。出土金属製品の保存処理および陶磁器の修理、石製品の保存処理、大型資料の複製業務に携わる。平成10年より出土金属製品の保存処理部門の専任となる。
遺跡から発見された遺物は遺跡の評価基準そのもの。いわば地中に遺された「歴史的証拠物件」ともいえる。しかしその「証拠物件」も発見後の取り扱いによっては著しい劣化が生じてその価値を大きく減らしてしまう。そんな不安定な物質をより安定化させることが保存処理の目指すものと考えている。
経験を重ねるほどに壁を感じることもあるが、それでもなお保存処理を施す過程で「証拠物件」としての価値を下げることを避け、不幸にして下がった価値の回復に、また見過ごされた価値の発見と維持に努めたいと思う。もっとも、現在の保存処理は実質的には延命処置でしかなく効果も完全とはいえない。しかし延命処置であったとしても遺物にとってより負担が小さく、かつ効果の高い延命処置を施したい。
今後の抱負
「歴史的証拠物件」ともいえる文化財の
普及や活用の進展につながることを願って。
我々のような文化財の修理・修復、保存処理に関わる者の日々の活動が「歴史的証拠物件」の活用(研究および展示)が進む契機となればと願っています。

仕事内容

もう少し、もう少し……と錆と戦う日々。
金の輝きを取り戻したときの感動はひとしお。
出土金属製品の保存処理を担当しています。鉄器、青銅器など、まずX線写真を撮影し、それを見ながら錆で覆われた遺物を、本来の姿に近づける作業です。埋蔵文化財は状態の良くないものも多く、錆がきれいに除去できるわけではありません。もう少し、もう少し……、と錆と戦うのはストレスがかかる仕事です。しかしぼこぼこした錆の塊が、美しい剣や鏃、飾金具などに戻ったときの感動は大きく、何とも言えません。
金銅製品では実体顕微鏡の下で、わずかずつ丁寧に錆を取って、金の輝きを取り戻してくれたら、「良かったね」と声をかけたくなります。
そして本来の美しい形を少しでも長く保ってくれるよう、錆びて安定化しようとする金属の錆の進行を遅らせるため、今できる最高の保存処理をしたいと思います。
今後の抱負
私たちの関わった遺物から
新たな発見のあることを期待して。
古代の技術は優れたもので、知らないこと、勉強しなければならないことが、たくさんあります。考古学的な発見は、まだまだあると思っています。多くの遺物を見ることも勉強になるので、いろいろな展覧会を見るよう努力しています。私たちの関わった遺物から、新たな発見のあることを期待して、サンドブラスターの砂にまみれながらこれからもがんばります。

仕事内容

入念な下準備と慎重な作業で
一筋縄ではいかない埋蔵文化財の保存処理に取り組む。
主に出土木製品の保存処理を担当している平井孝憲です。奈良教育大学で文化財科学を専修後、奈良県立橿原考古学研究所で保存科学を学び、現在に至ります。
木製品をはじめとする有機質遺物は、近代に入ってプラスチックや合成樹脂が普及するまで生活に無くてはならない素材でした。鋤・鍬などの農耕具や、器・匙などの食器具、笊・籠などの編物状製品、それに漆塗の調度品や人形などの細工物…。これらは長い間土中に埋没されていたため、発掘されることによって環境が変わると急速に劣化が進みます。そのため、埋蔵文化財の保存処理は一筋縄ではいかないものばかりです。個体の形状や構造・劣化状態などによって、一工夫・二工夫が必要になってきます。また複合遺物の場合、同一個体でも素材によって劣化の度合いが異なるため、入念な下準備と養生が欠かせません。
遺物の形状を維持するのはもちろん、保存処理することによって加工痕や使用痕がより一層明瞭に観察できるようになるよう、慎重に作業を進めています。また、材質や構造・作り方・使われ方など、保存処理の過程で判明していく可能性のあるさまざまなことを見逃さないよう、細心の注意を払って日々の業務に取り組んでいます。
今後の抱負
より安全で、より早く、より多くの情報を引き出し、より良い仕上がりになるよう、日々工夫と研究を重ねていきたいと思います。それには幅広い分野の見識と、深い専門知識が必要だと考えています。
また、環境に負荷をかけない仕組みを模索・構築する必要があると感じています。