文化財の複製・修復|文化財の修復・修理
安徳台遺跡群出土 鉄剣・鉄戈

平野のなかに水路の行く手を阻むように溶岩台地が東西に展開しています。台地は地表から10mほど高く、上の広さは10万平方mもあります。台地の上に登る通路は北側に1ヶ所しかないので、防御性にすぐれ、弥生時代の集落や甕棺墓のほか中世原田氏の居館もあったといわれています。
台地上の弥生時代中期の集落は、100軒もある大集落で、住居址(円形)は直径10mもある大型のものばかりです。大きな墓穴に2個ならべて埋葬した王墓とみられる甕棺墓から当時は王しかもたない鉄剣・鉄弋など大形の鉄製武器が副葬されていました。鏡の出土はありませんが、奴国王墓のひとつとみられています。
平氏滅亡のころ、筑紫の地まで落ち延びた安徳天皇の伝承があるところから、安徳台と呼ばれています。
製作者コメント
出土金属製品に付随した有機質材料が良好にその状態を保つことは稀なことです。しかし、安徳台遺跡から出土した鉄剣には、柄に対して直角ごく細い糸が柄に密に巻きつけられていている状況が一部で確認されました。その状況を拡大観察すると、糸には乙方向の撚りがかけられていること、糸が10mm幅に30本程度巻きつけられていることが見て取れました。また、X線透過画像を確認すると、(1)柄の途中からくびれた部分があったこと、(2)くびれた部分にもわずかながら巻きつけられた糸が残っていること、(3)くびれた部分に巻きつけられた糸は上述の糸よりも太い糸であったことが確認できました。
細い糸に対しては、樹脂塗膜の厚みを調整して細部の形状が補強・防銹用の樹脂に埋没しないよう、樹脂含浸後の余分な樹脂の洗浄の際に洗浄用の有機溶剤をスプレーで吹き付けることで、極端な質感の低下を防ぎました。一方、太い糸についてはそのX線透過画像から、糸の周囲に固着する泥や土を機械的手法で除去すれば破損の恐れが高いと判断したため、糸を表出することは避けました。
出土金属製品、特に鉄製品は総じて腐食が進行しているため、明快なコントラストを示すX線透過画像が得られないことが一般的です。しかしながら、本件からはX線透過画像を詳細に観察することで一見、不明瞭に見える画像からも資料の本来の形状を示す有効な情報が得られることが再確認できました。