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医学・看護のシミュレーション教育情報をお届けするWEBマガジン

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シミュレーション教育を用いた院内看護教育の仕組みづくり(前編)

こんにちは、WEB管理担当のウエハラです。
院内教育でシミュレーション教育を取り入れている三菱京都病院 看護師長 矢野諭美氏に、院内にシミュレーション教育を広めた過程や実際に行っている教育についてお話を伺いました。

*この記事は「新人看護職員研修 教材カタログ2022年度版」に掲載の記事をWEB用に書き起こしたものです。


RSNA2021出展レポートの写真

三菱京都病院での院内教育について

 当院では、スタッフ全員が新人教育にかかわりを持ち、網目状にチーム全体で新人を支えて育てる体制をとっています。以前は、プリセプターがついてマンツーマンで教育する方法でしたが、プリセプターの業務負担が大きくなることや新人が離職した場合のプリセプターの精神的な落ち込みが大きくなるため、今の体制に変更しました。

 前任の現任教育委員長が指導側に教える風土をすごく熱心に教育してくれたので、1 年生にだけ教えるよりは、教育担当者の教育に関しての講義も入れて、指導側の質と風土を上げるようにしています。

RSNA2021の会場の様子

体勢のイメージ図

シミュレーション教育を取り入れたきっかけ

様々な研修を受けに行き出会った先生にご協力いただけたこと

 現任教育委員となった時に、手探りで教育と名の付く研修をいろいろ受けに行ってたら、その中でシミュレーション教育に出会いました。

当院に取り入れようとしたときに、ファシリテーターの育成や風土を変えないといけなくて、私の力では足りないなと。そこで、研修で出会った先生に来ていただいて、ご講義いただきました。先生の言葉一つで雰囲気が変わり、協力してくれるスタッフが出てきました。その先生に出会い、またお力をお借りできたことは、私にとっても当時の現任教育にも幸運なことでした。

担当になった頃、最初の3 年間は設営や後片付け等に時間がかかり大変でした。当院にシミュレーションセンターはないので、会議室にベッドを持って行ったり、モニターをつないだりするのは少人数で行っていましたが、今では、私は日時を決めるだけで、シミュレーション教育は現任教育のメンバーが全部やってくれるんですよ。

院内教育の仕組みがうまくいったコツは?

メンバーに恵まれたこと、やり続けること

ホワイトボードに観察内容を記入する看護師

院内シミュレーションの様子

今の仕組みがうまくいったのは、一番はメンバーに恵まれたことと、とりあえずやり続けることだと思います。私が代表で計画した研修を、最初はとりあえずやってもらいました。1 年生や指導側にこんなのできないと言われても、できていることを常々伝えました。すると、「あ、こうやって教えるんだな」「シミュレーションってこうやってやるんだな」というのがだんだんわかってきます。私が二人に教えたらその子がまた二人ずつに教えて網目状に広がっていったので、やはり継続したことが一番広がりました。

あとは、優秀なスタッフが多いので、最初のきっかけさえ作れば、こうしようああしようと勝手にスタッフが動いてくれます。当院の自由にさせてもらえるという風土でうまくいった側面もあると思います。

実施しているシミュレーション教育について

シミュレーションを動画で撮り、みんなでデブリーフィングを行う

シミュレーション教育は集合教育で行っていますが、いずれは各部署でやるというのが目標です。

例えば、一般病棟では、「なんとなくしんどい」という状態から悪くなるというモデルケースの動画を作成して研修で流し、途中で止めて、その後どうしますかという流れで、模擬患者さんでのシミュレーションやデブリーフィングを行っています。その後に集中ケア認定看護師による急変時の一次対応や二次対応の講義を受けて、身体と頭を合致させるようにしています。

心肺停止時はプロトコール決まっていますが、1年生はちょっと状況が悪い人にどう対応するかというのが一番考えます。そこで、そのリアルな状況を動画で撮って、その後の対応のシミュレーションを研修で行っています。また、動画を見て学び、実際に経験するときのために備えるように指導しています。

最近は、デブリーフィングの途中で知らない単語や症例が出てきたら後出しで資料を提示しホワイトボードに書き込んで広げていき、看護診断をする方法もとっています。例えば、ショックをいう単語が出てきたら資料を提示して教科書と合致した状態であることを見せたり、症状が肺血腫に結びついたらその症例について調べたりして、理解を深めています。

京都科学のブース写真

急変時対応のシミュレーション動画:息がしんどい状態から徐々にレベルが下がり心肺が停止するケース。指導側の看護師たちで協力して撮影


今回はここまでです。後半は、シミュレーション教育のもたらすメリットや面白さについてご紹介します。次回は10月3日公開予定です。

Writer's Portrait インタビューご協力
看護師長 矢野 諭美氏(写真左)
副看護師長 現任教育長 都木 和子氏と一緒に
学校の外観 施設情報
三菱京都病院は、1946年10月に三菱重工(自動車)の福利厚生施設として設立された企業立病院です。開設当時より、社員とその家族だけでなく、地域社会に開かれ地域住民に貢献する中核病院として尽力してきました。三菱京都病院の使命は、高度であたたかい医療をご提供することです。そのために、優れた医師・職員による丁寧な医療の実現と多職種が参加するチーム医療の実践に、日々努力を重ね、高度急性期医療に特化し、地域に信頼される医療を提供していきます。


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